現場の声でわかる!医薬品品質管理のリアルな課題と解決策

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製薬業界で品質管理に従事する皆さん、毎日の業務で「理想と現実のギャップ」を感じたことはありませんか?

私は製薬会社で18年間、そのうち品質保証部門で12年間、現場の最前線に立ち続けてきました。
入社3年目に異物混入事案を経験し、徹夜での原因究明を通じて品質管理の重みを痛感した一人として、今日は皆さんに本音でお話ししたいと思います。

📊 この記事で得られること

  • 現場でよく遭遇する品質管理の課題とその背景
  • 18年の経験から導き出した実践的な改善策
  • FDA査察やMHLW査察で指摘されがちなポイント
  • 明日から使える具体的なアクションプラン

2021年のGMP省令改正[1]、そして2024年のGMP調査要領制定[2]により、品質管理の要求水準は確実に上がっています。
しかし、現場では依然として「マニュアル通りにやっているのに、なぜうまくいかないのか」という声が聞こえてきます。

その答えは、品質管理が単なる「守るもの」ではなく「創るもの」だということを理解することから始まります。
今回は、私自身の失敗談も交えながら、現場に根ざした本当に使える品質改善のヒントをお届けします。

目次

現場で頻出する品質管理のリアルな課題

異物混入・微生物汚染の再発リスク

品質管理の現場で最も緊張感が走る瞬間、それは異物混入や微生物汚染が発見された時です。
私自身、入社3年目に経験した異物混入事案は、今でも品質への姿勢を問い直す原点となっています。

🔍 現場でよく見られる異物混入パターン

  • 作業者の毛髪や繊維くず
  • 設備由来の金属片やゴム片
  • 虫などの外部からの侵入物
  • 包装材料の破片や印刷インク

問題なのは、一度異物混入が発生すると、同じ製造ラインや同様の作業工程で再発するリスクが高まることです。
これは単純に「注意不足」という問題ではありません。

根本的な原因として、製造環境の維持管理体制や作業者の意識レベルに構造的な課題があることが多いのです。
特に、異物混入ゼロを3年間維持した経験から言えるのは、「予防の仕組み」を作り込むことの重要性です。

文書と実務の乖離:GMPマニュアルの”形骸化”

「手順書通りにやっているはずなのに、なぜ問題が起きるのか?」

これは品質管理の現場で最もよく聞かれる疑問の一つです。
実際には、文書に書かれた理想的な手順と、現場で行われている実際の作業に微妙なズレが生じていることが原因となっています。

現場の声
「手順書は完璧に見えるけれど、実際の作業では判断に迷う場面が多い。結果的に、経験者の『やり方』に頼ってしまう」

この現象は、特に以下の場面で顕著に現れます:

1. 判断基準が曖昧な作業
手順書に「適切に」「十分に」といった抽象的な表現が多用され、作業者によって解釈が異なる

2. 例外処理への対応
標準的でない状況が発生した際の対応手順が明確でなく、現場判断に委ねられる

3. 設備・環境の変化への追従
設備更新や作業環境の変化に対して、手順書の更新が追いついていない

CAPAの形骸化:真因追及の限界と対応の曖昧さ

2021年のGMP省令改正により、CAPA(是正措置・予防措置)が法的要件として明確化されました[3]。
しかし、現場でのCAPA運用には深刻な課題があります。

📊 CAPA運用でよく見られる問題点

問題現場の実態影響
根本原因分析の不備「ヒューマンエラー」で片付ける再発防止効果なし
予防措置の軽視是正措置のみに集中同様の問題が他で発生
部門間連携不足各部門が個別対応全社的な改善につながらない
フォローアップ不足対策実施後の効果検証不十分形式的な対応で終了

特に問題なのは、「なぜなぜ分析」を行っても表面的な原因しか見つけられず、本質的な仕組みの改善に至らないケースです。
これでは、同じような問題が形を変えて再発することになります。

教育訓練の課題:現場任せの属人化

製薬業界では、GMP教育訓練が品質保証の基盤とされています。
しかし、多くの現場で教育訓練が「形式的な通過儀礼」になってしまっているのが実情です。

⚠️ 教育訓練の典型的な問題

  • 座学中心で実務との関連性が薄い
  • 受講記録は残るが理解度の確認が不十分
  • 熟練者から若手への技能伝承が属人的
  • 教育内容が現場の実際の課題と乖離

私が週1回開催している「品質カフェ」では、堅苦しい教育ではなく、現場の事例を持ち寄って議論する形式を取っています。
この取り組みを通じて感じるのは、知識の一方的な伝達ではなく、双方向の気づきの共有こそが真の教育効果を生むということです。

グローバル対応における混乱とズレ(FDA vs MHLW)

国際的な展開を図る製薬企業にとって、FDA査察とMHLW査察の違いは大きな課題です。
私自身、両方の査察対応を経験する中で、それぞれの特徴と対応のポイントを把握してきました。

🌍 FDA査察の特徴

  • 追跡調査手法:一つの問題から関連するプロセス全体を部門横断で調査
  • システム重視:個別の不適合よりも、システムの有効性を重視
  • CAPA要求:根本原因分析と予防措置の実効性を厳しくチェック

🇯🇵 MHLW査察の特徴

  • 書面確認重視:文書の整備状況と記録の正確性を詳細チェック
  • 手順遵守確認:決められた手順が正しく実行されているかを確認
  • 国内基準準拠:日本の薬事法規制への適合性を重視

この違いを理解せずに対応すると、査察で指摘を受けるリスクが高まります。
特に、FDA査察では「なぜその仕組みになっているのか」「他に同様の問題はないか」といった本質的な質問が多く、表面的な対応では通用しません。

実体験から見る課題の背景と発生要因

筆者が直面した「異物混入」事案とその原因

入社3年目の出来事は、今でも私の品質管理への考え方の原点となっています。
ある製品の最終検査で、微細な繊維状の異物が発見されたのです。

その時の緊迫した状況を思い出すと、今でも背筋が伸びる思いがします。
深夜まで続いた原因究明では、製造ライン全体を停止し、関係者総出で調査を行いました。

🔍 異物混入事案の真相

当初は「作業者の服装由来」と考えられていましたが、徹底的な調査の結果、意外な原因が判明しました。

1. 表面的な原因
作業着のほころびから繊維が脱落

2. 直接的な原因
作業着の点検・交換基準が不明確で、老朽化した作業着を使用継続

3. 根本的な原因
作業着管理の責任体制が曖昧で、定期点検の仕組みが機能していない

4. システム的な原因
品質リスクを予見し予防する仕組みが不十分

この経験から学んだのは、「人のミス」で片付けてしまうことの危険性です。
個人の注意喚起だけでは根本的な解決にならず、必ず同様の問題が再発します。

誤解されがちな「GMP遵守」の本質

「GMPを遵守している」と言う時、多くの人が思い浮かべるのは「手順書通りに作業すること」かもしれません。
しかし、18年間の経験を通じて理解したGMPの本質は、もっと深いところにあります。

💡 GMP遵守の真の意味

「GMPとは、マニュアルを守ることではない。品質を創り出す文化を築くことである」

真のGMP遵守とは、以下の3つの要素が組み合わさったものです:

1. 技術的な要求事項の充足
手順書、記録、設備などの「ハード面」の整備

2. 人的な意識と能力の向上
教育訓練、責任体制などの「ソフト面」の充実

3. 継続的改善の仕組み
問題の予防と改善を促進する「システム面」の構築

多くの現場で見落とされがちなのは、3番目の「継続的改善の仕組み」です。
これがないと、問題が発生してから対応する「後追い型」の品質管理から脱却できません。

調査報告書に見られる”根本原因未解決”の傾向

CAPA運用において最も重要なのは「根本原因の特定」ですが、現場の調査報告書を見ると、本当の根本原因にたどり着いていないケースが非常に多いのが実情です。

📋 根本原因分析でよくある失敗パターン

【ダメな例】

  • 原因:作業者のミス
  • 対策:注意喚起、再教育

【良い例】

  • 原因:判断基準が不明確で、作業者によって解釈が異なる手順書
  • 対策:具体的な判断基準の明文化、作業手順の見直し、チェック体制の強化

問題なのは、「人のせい」にしてしまうと、そこで思考が停止してしまうことです。
本当に問われるべきは「なぜその人がミスをしてしまう状況が生まれたのか」という仕組みの問題です。

私が実践している根本原因分析では、必ず「3人以上で討議」することをルールにしています。
一人で考えると、どうしても思い込みや先入観が入ってしまうからです。

海外査察で指摘される日本的運用の盲点

国際的な査察、特にFDA査察では、日本企業特有の運用方法が指摘されることがあります。
私自身の査察対応経験から、特に注意すべきポイントをお伝えします。

🌐 日本的運用の盲点

1. 「阿吽の呼吸」に頼った意思疎通
日本の現場では「言わなくても分かる」文化がありますが、国際基準では全てが文書化・記録化されている必要があります。

2. 「改善」と「CAPA」の混同
日本の「カイゼン」文化は素晴らしいものですが、CAPAは単なる改善ではなく、系統的な問題解決アプローチが求められます。

3. 責任体制の曖昧さ
「みんなで協力して」という文化は美しいものですが、査察では「誰が最終責任を負うのか」が明確である必要があります。

4. 予防的思考の不足
日本では問題発生後の対応に長けていますが、「まだ起きていない問題を予防する」という予防措置の考え方が不足しがちです。

これらの盲点を理解し、グローバルスタンダードに対応できる体制を構築することが、今後ますます重要になってきます。

現場で実践して効果のあった改善策

CAPAの本質的な運用フロー構築

私が12年間の品質管理経験を通じて構築したCAPAフローは、従来の形式的な運用とは大きく異なります。
最も重要なのは、「なぜその問題が起きたのか」を仕組みレベルで考えることです。

🔄 効果的なCAPAフロー(7ステップ)

1. 問題の明確な定義(Identification)

  • 何が起きたのか(事実)
  • いつ、どこで、誰が関わったか(5W1H)
  • 影響範囲はどこまでか

2. リスク評価(Evaluation)

  • 患者さんへの影響度
  • 事業への影響度
  • 法規制上の問題の有無

3. 調査計画の立案(Investigation)

  • 調査チームの編成(必ず複数部門から参加)
  • 調査方法と期限の設定
  • 必要なリソースの確保

4. 根本原因分析(Analysis)

  • 5Whyによる深掘り
  • フィッシュボーン図での多角的検討
  • システム的な問題の特定

5. 対策計画の策定(Action Plan)

  • 修正措置(immediate correction)
  • 是正措置(corrective action)
  • 予防措置(preventive action)

6. 実施とモニタリング(Implementation)

  • 責任者と期限の明確化
  • 進捗状況の定期確認
  • 障害要因の早期発見と対応

7. 効果確認(Effectiveness Check)

  • 対策実施後の状況監視
  • 類似問題の発生状況確認
  • システム全体への改善効果の評価

特に重要なのは、ステップ4の根本原因分析です。
ここで表面的な原因に留まってしまうと、その後の対策も効果的になりません。

属人化を防ぐ標準化と教育体系の整備

品質管理業務の属人化は、多くの製薬企業が抱える深刻な課題です。
私が実践してきた標準化アプローチをご紹介します。

📚 標準化の3段階アプローチ

【レベル1:業務の見える化】

  • 暗黙知として行われている業務を文書化
  • ベテラン社員の判断基準を明文化
  • 業務フローの視覚化(フローチャート作成)

【レベル2:判断基準の具体化】

  • 「適切に」「十分に」といった曖昧な表現を具体的な基準に変更
  • OK/NG事例集の作成
  • 判断に迷う場面での対応手順の明確化

【レベル3:継続改善の仕組み化】

  • 定期的な手順書見直しのサイクル確立
  • 現場からの改善提案を反映する仕組み
  • 教育効果測定と改善のPDCAサイクル

文書レビューの現場参加型アプローチ

従来の文書レビューは、品質保証部門が一方的にチェックするスタイルが多く見られました。
しかし、これでは現場の実情と乖離した文書ができてしまいます。

🤝 現場参加型レビューの実践方法

1. レビューチームの多様化
品質保証部門だけでなく、製造現場、技術開発、薬事部門から参加者を選出

2. 実地確認の重視
文書の記載内容を現場で実際に確認し、実現可能性を検証

3. 「なぜ」を3回繰り返す
手順の根拠を明確にし、目的と手段の整合性を確認

4. 例外事例の事前検討
標準的でない状況での対応方法を事前に議論し、文書に反映

この方法により、文書と実務の乖離を大幅に減らすことができました。
また、現場の作業者が文書作成に参加することで、手順書への理解と遵守意識が向上します。

定例化した「品質カフェ」の運用事例

私が最も効果を実感している取り組みが、週1回開催している「品質カフェ」です。
これは堅苦しい会議ではなく、コーヒーを飲みながらリラックスした雰囲気で品質について語り合う場です。

品質カフェの運営ポイント

参加者:部門・職位に関係なく自由参加(平均10-15名)

開催時間:毎週金曜日16:00-16:30(30分間)

議題

  • 今週発生した品質に関する事例の共有
  • 他社の品質問題事例から学ぶディスカッション
  • 改善アイデアのブレインストーミング
  • 品質に関する疑問・質問の相談

運営ルール

  • 批判禁止(どんな意見も歓迎)
  • 失敗事例の共有を推奨
  • 持ち帰り案件は必ず翌週フォロー
  • 議事録は簡潔に、アクションは明確に

この取り組みの効果は数字にも現れています。
品質カフェ開始前と比較して、品質逸脱の件数が30%減少し、現場からの改善提案が2.5倍に増加しました。

チェックリストによる自主点検の導入効果

「チェックリスト」と聞くと形式的なものを想像される方もいるかもしれませんが、適切に設計されたチェックリストは非常に強力な品質管理ツールです。

効果的なチェックリスト設計の原則

1. 具体性の確保
「確認する」ではなく「○○が××であることを目視で確認する」

2. 判断基準の明確化
OK/NGの判断に迷わない明確な基準を設定

3. 適切な粒度
細かすぎず粗すぎない、実用的なレベルで設定

4. 定期的な見直し
実運用での問題点を反映し、継続的に改善

私の部門では、「3層チェックリスト方式」を採用しています:

  • 日常点検リスト:毎日の基本的な確認事項
  • 週次点検リスト:より詳細な状況確認
  • 月次点検リスト:システム全体の総合的な評価

この方式により、問題の早期発見率が向上し、重大な品質問題に発展する前に対策を講じることができるようになりました。

今後求められる品質管理の視点と展望

品質を「守る」から「創る」へ:プロアクティブQCの提案

従来の品質管理は「問題が起きてから対応する」リアクティブ(反応型)なアプローチが中心でした。
しかし、今後は「問題が起きる前に予防する」プロアクティブ(予防型)なアプローチが求められます。

🚀 プロアクティブQCの3つの柱

1. 予測的品質管理

  • データ分析による品質リスクの予測
  • トレンド分析による問題の兆候把握
  • AIやIoTを活用した予兆監視システム

2. デザイン段階からの品質作り込み

  • QbD(Quality by Design)の徹底実践
  • 工程能力を考慮した設計
  • リスクアセスメントの前倒し実施

3. 継続的な改善文化の醸成

  • 全員参加型の品質改善活動
  • 失敗を学習機会として捉える風土
  • イノベーションを促進する仕組み

私が理想とする品質管理は、「品質を創造する」ことです。
決められた基準を満たすだけでなく、患者さんにとって真に価値のある品質を追求し続ける姿勢が重要です。

現場と経営の橋渡しとしての品質マネージャーの役割

品質管理業務に従事する私たちは、現場の実情と経営層の期待の間に立つ重要な役割を担っています。
この「橋渡し機能」をいかに発揮するかが、組織全体の品質向上の鍵となります。

🌉 品質マネージャーに求められる3つの視点

1. 現場視点(ミクロ視点)

  • 日々の作業で発生する具体的な課題の理解
  • 作業者の負担や困りごとへの共感
  • 実現可能な改善策の提案

2. 経営視点(マクロ視点)

  • 事業戦略と品質戦略の整合性確保
  • リスクとコストのバランス考慮
  • ステークホルダーへの説明責任

3. 社会視点(グローバル視点)

  • 患者さんの安全性を最優先に考える使命感
  • 社会的責任を果たす企業市民としての自覚
  • 持続可能な医療への貢献

特に重要なのは、現場の声を経営層に適切に届けることです。
現場では「当たり前」と思われている課題も、経営層には見えていないことがあります。
私は月1回、経営陣に対して「現場の品質課題レポート」を提出し、課題の共有と解決策の討議を行っています。

デジタル化と人的感覚の融合:Smart QAへの移行

Industry 4.0の波は製薬業界にも押し寄せており、品質管理の分野でもデジタル技術の活用が進んでいます。
しかし、重要なのは技術と人間の感覚のバランスです。

💻 Smart QAの実現に向けて

デジタル技術で強化すべき領域

  • 大量データの分析と可視化
  • リアルタイム監視とアラート
  • 文書管理と記録の自動化
  • 予測分析とリスク評価

こうした技術革新の流れの中で、日本バリデーションテクノロジーズのような医薬品分析装置の専門企業が果たす役割はますます重要になってきています。
高度な分析技術と人間の専門性を組み合わせることで、より効果的な品質管理システムが実現可能になります。

人間の感覚を重視すべき領域

  • 異常の気づきと直感的判断
  • 複雑な状況での意思決定
  • ステークホルダーとのコミュニケーション
  • 創造的な問題解決

私の経験では、「データは嘘をつかないが、データだけでは真実は見えない」ということです。
数値化できない現場の「違和感」や「勘」も、品質管理においては重要な情報源となります。

若手担当者への育成戦略と意識づけの工夫

品質管理の将来を担う若手人材の育成は、私たち中堅管理者の重要な責務です。
知識やスキルの伝承だけでなく、品質への意識と責任感をいかに育むかが鍵となります。

🌱 効果的な若手育成アプローチ

1. 体験型学習の重視

  • 実際の品質問題事例を題材にしたケーススタディ
  • 他部門との協働プロジェクトへの参加
  • 査察対応や顧客対応の現場体験

2. メンタリング制度の活用

  • 先輩社員による1on1指導
  • 定期的な振り返りと目標設定
  • キャリア相談とアドバイス

3. 責任と権限のバランス

  • 段階的な責任拡大
  • 失敗を許容する環境づくり
  • 成功体験の積み重ね

4. 品質への使命感の醸成

  • 患者さんへの影響を具体的にイメージさせる
  • 品質管理の社会的意義の理解促進
  • 誇りを持って働ける環境の整備

私が若手指導で最も大切にしているのは、「品質は愛である」という価値観の共有です。
これは私が大学時代に読んだ書籍から学んだ考え方で、技術的なスキル以上に重要な心構えだと考えています。

まとめ

現場に根ざした課題と向き合うことの重要性

18年間の品質管理業務を通じて最も強く感じるのは、「現場の声に耳を傾けることの大切さ」です。

経営層や品質保証部門が考える「あるべき姿」と、製造現場の「現実」には、どうしてもギャップが生まれます。
このギャップを埋めるためには、現場に足を運び、作業者と同じ目線で問題を見つめることが欠かせません。

💡 現場重視のアプローチで得られる効果

  • 真の問題発見:表面的な症状ではなく、本質的な課題の把握
  • 実現可能な対策:理想論ではなく、実行可能な改善策の立案
  • 現場の協力:押し付けではなく、共に作り上げる改善文化
  • 継続的改善:一過性の対策ではなく、持続可能な品質向上

私の経験では、現場との信頼関係なくして、真の品質改善は実現できません。

今日から実行できる改善アクションの再確認

これまでお話しした内容を踏まえ、明日から実践できる具体的なアクションをまとめます:

🎯 すぐに始められる5つのアクション

1. 現場とのコミュニケーション強化

  • 週1回、製造現場を巡回し、作業者と直接対話する時間を作る
  • 品質問題発生時は、まず現場に足を運んで状況を確認する

2. CAPA運用の見直し

  • 次回のCAPA実施時に、根本原因分析で「5Why」を徹底的に実践する
  • 是正措置だけでなく、予防措置の計画も必ず立案する

3. 文書の実用性向上

  • 手順書の曖昧な表現を具体的な基準に書き換える
  • 現場作業者に文書レビューへの参加を依頼する

4. 教育方法の改善

  • 座学だけでなく、実際の事例を題材にした討議形式を取り入れる
  • 知識の一方的な伝達ではなく、現場の気づきを共有する場を作る

5. 継続的な自己研鑽

  • 他社の品質問題事例から学ぶ習慣をつける
  • 新しい品質管理手法や技術情報に関する情報収集を継続する

品質管理担当者へのエール:「品質は愛」であるという原点回帰

最後に、品質管理に従事する皆さんに伝えたいメッセージがあります。

私たちが日々取り組んでいる品質管理業務は、単なる「規制対応」や「コスト管理」ではありません。
医薬品の向こう側にいる患者さんの命と健康を守る、極めて重要な使命なのです。

「品質は愛」

これは私が品質管理者として常に心に刻んでいる言葉です。
愛情を持って作られた製品でなければ、患者さんに安心してお使いいただくことはできません。

時には厳しい規制要求や、理不尽な査察指摘に直面することもあるでしょう。
しかし、そんな時こそ原点に立ち返ってください。

私たちは、より良い医薬品を通じて、患者さんの笑顔と健康に貢献しているのです。
この使命感を胸に、共に品質管理のプロフェッショナルとして成長し続けましょう。

品質管理は決して一人でできる仕事ではありません。
現場の作業者、他部門のメンバー、そして患者さんや社会との連携があってこそ実現できるものです。

「一人で速く、みんなで遠く」

この考え方で、持続可能な品質改善を目指していきましょう。


参考文献

[1] 医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令の一部改正について – 厚生労働省

[2] GMP適合性調査業務 – 独立行政法人医薬品医療機器総合機構

[3] 医薬品GMP理解の第一歩【第7回】CAPA – GMP Platform

最終更新日 2025年7月8日 by negiba

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